データ駆動プロセッサを核とするネットワーキングアーキテクチャ

データ駆動(非ノイマン型)プロセッサは,データが揃った演算を実行可能とする,本来的に並列処理に適した動作原理を具現化したプロセッサです。

逐次型(ノイマン型)プロセッサの文脈切換えのようなオーバヘッドがなく,同時処理するパケット数などを示す多重度が実行時に増加しても,負荷が設計目標を超えない限り,ターンアラウンドタイムが一定に維持され,実時間処理を保証できます。

したがって,トラフィック(≒同時処理するパケット数)の増加に対処して実時間制約を保証する必要があるネットワーキング処理に原理的に適したプロセッサです。このデータ駆動プロセッサを核として,ネットワーキング方式から回路実現法までにわたるネットワーキングアーキテクチャを研究しています。

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最近の研究成果

最近の発表論文から,研究内容の一端を紹介します

FPGA向け2相束データ方式環状自己同期型パイプラインの設計法と改良

2相束データ方式の環状自己同期型パイプライン(TBCSTP)は,比較的高速かつオンデマンドなデータ転送により高い電力性能効率が得られ,環状データパスにより反復・再帰演算やプログラム実行までを実現できる魅力的な非同期回路です。私たちはTBCSTPを市販FPGA上に実現する回路設計法を開拓してきました。本論文では,主要な転送制御信号経路の「ショートカット」の導入によりスループットの向上を図る改良を示すとともに,静的タイミング解析に必要なタイミング制約を明らかにしました。

自己同期型パイプライン非同期回路FPGA

Shuji Sannomiya, Senri Yoshikawa, Makoto Iwata, "FPGA-oriented Two-phase Bundled-data Circular Self-timed Pipeline and Its Refinement," Journal of Information Processing, Vol.34, pp.535-547, Jun. 2026. DOI: 10.2197/ipsjjip.34.535

IoT計算基盤のための自己同期型データ駆動プロセッサの実装

データ駆動処理方式を具現化し,自己同期(大域的クロックなし)のパイプライン回路上で実行時オーバヘッドゼロの実時間多重処理を実現するプロセッサ「STDDP」の実装を示しました。命令の複雑さと多様性の参照としてRISC-Vの基本整数命令セットRV32Iを採用し,レジスタ的な内部メモリをSTDDPに導入してRV32I相当の命令セットを策定,これを実現するプロセッサを評価しました。

データ駆動プロセッサRISC-VIoT

Jun Nakayama, Shuji Sannomiya, Makoto Iwata, "Implementation of Self-timed Data-driven Processor for IoT Computing Platform," in Proc. of International Electrical Engineering Congress (iEECON2026), 2026.

IoT計算基盤のためのStream-Thru処理方式

IoT機器を動的な負荷変動に対して頑健にするうえで不可欠な「スループットの保証」を可能にするプロセッサアーキテクチャ方式「Stream-Thru処理方式(STPS)」を提案しました。データ駆動方式はオペランドが到着し次第受動的に演算を開始するため,プロセッサ内を流れるデータ数が所与の容量を超え,期待するスループットが得られなくなり得るというアーキテクチャ上の課題を指摘し,その解決を図るものです。

スループット保証実時間多重処理IoT

Shuji Sannomiya, Senri Yoshikawa, Makoto Iwata, Hiroaki Nishikawa, "Stream-Thru Processing Scheme for IoT Computing Platform," Proc. of 2025 IEEE Region 10 Symposium (TENSYMP), Jul. 2025.

自己同期型データ駆動プロセッサを用いたIoT計算基盤の異常検知

サイバー攻撃や故障などの異常を検知するための,外付けかつ軽量な監視回路を提案しました。外部からの監視は,監視対象の異常の影響を受けにくく,対象の処理能力をほとんど消費しない点で望ましい一方,従来手法ではプロセッサ規模の追加回路が必要でした。STDDPの特性を活用することで,計算資源の限られたIoT機器にも適した軽量な外部監視を実現します。本論文は IEEE CCWC 2025 にて Best Paper Award を受賞しました。

異常検知セキュリティIoT

Hajime Maeda, Shuji Sannomiya, Keisuke Kameyama, Hotaka Takizawa, Makoto Iwata, Hiroaki Nishikawa, "Anomaly Detection in IoT Computing Platform Using Self-Timed Data-Driven Processor," Proc. of IEEE 15th Annual Computing and Communication Workshop and Conference (CCWC), pp. 00901-00908, Jan. 2025.

4相束データ方式環状自己同期型パイプラインのEDA向けFPGA回路設計法

電力性能効率の高さから注目される自己同期型パイプライン(STP)を,業界標準のEDAツールを用いて市販FPGA上へ実現するための設計法を提案しました。従来回路では,パイプラインの分岐やデータの複製・消去などの機能の実現において,EDAツールが回路構成を適切に解釈できず,設計不良や大幅なスループット劣化が生じることを指摘し,低遅延ハンドシェイク回路を含む4相束データ方式環状STPの設計法を示しました。

自己同期型パイプラインEDAFPGA

Senri Yoshikawa, Shuji Sannomiya, Makoto Iwata, Akira Sato, Hiroaki Nishikawa, "EDA-oriented FPGA Circuit Design Method for Four-phase Bundled-data Circular Self-timed Pipeline," Journal of Information Processing, Vol.31, pp.495-508, Aug. 2023. DOI: 10.2197/ipsjjip.31.495

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